青色申告でおさえておくべき条件。ハードルの高さがわかれば10万円控除という選択もある

個人事業主は青色申告にするのが当然のように言われますが、本当にそうでしょうか?
何でもそうですが、何がその人にとって最適なのかは人それぞれです。

青色申告のメリットだけでなく、デメリット(条件・ハードルの高さ)もあります。
そのことを踏まえたうえで、青色か白色かを選びましょう。

目次

青色申告にするかしないか

個人事業主として独立・開業したらまず考えなければならないのは「青色申告」にするかどうかという問題。

青色申告するなら税務署へ申請書を提出しなければなりません。その提出期限は基本的には開業日から2か月以内の提出が必要です。もし間に合わなれば「白色申告」を選択したことになります。

つまり開業から2か月間は青色か白色かの選択期間ともいえます。

ここでたいていの人はここで青色申告を選ぶわけですが、
その理由のほとんどが「税金が安くなる特典があるから」というものなのです。

たしかに青色の方が税金がお得なのはそのとおりです。
ただ、お得という理由だけで青色を選ぶのはおすすめできません。

青色申告を選んだならこれだけはおさえておくべきこと

クラウド会計ソフトは導入するべき?

青色申告の方が白色よりも税金は確かにお得です。
ただそれには理由があって、複式簿記で帳簿をつけるという条件があるからです。

複式簿記で帳簿をつけるということは、会計ソフトを使って処理することと同じと考えておいていいです。
もちろんExcelだけでも不可能ではありませんが、手間やリスクを考えれば会計ソフトを使うことになります。

会計ソフトもいくつも種類がありますが、freee、マネーフォワード(MF)クラウド、弥生会計といったクラウド会計ソフトであればどれを選んでもいいでしょう(わたし的にはMFクラウドが使いやすくおすすめですが)。
使いやすいかどうかは実際に試してみないと何ともいえないので、無料のお試し期間を利用して体験してみるのがおすすめです。

もし迷ったら、気にいった色やデザインで決めるのも全然ありです。
クラウド会計ソフトの最大のメリットは銀行口座との連携です。
この連携機能はどのクラウド会計ソフトも大差はありません。

クラウド会計ソフトはミスしない?

クラウド会計ソフトは、簿記の知識がなくてもある程度の帳簿はつけることができますが、全く知識がなければ厳しいです。
「すべて自動化」のような売り文句で普及してきたクラウド会計ソフト。

ただ「すべて自動化」ではありません

自動化できないことはありますし、簿記の知識がある程度なければ厳しいでしょう。
売り文句を信じすぎてはいけません。

クラウド会計ソフトには、

  • 連携できるお金の動きに限って手で入力しなくてもいい
  • 入力したお金の動きを帳簿の種類ごとに集計してくれる

これだけを期待するにとどめましょう。

たとえばざっくりとですが、通帳の預金残高が100万円あるのにクラウド会計ソフト側の残高が△(マイナス)50万円というはおかしいわけです。

複式簿記を条件としていれば、簿記のルールを守ってない帳簿はあってはならないイメージをもっておきましょう。
ルールを守っているからこそ税金の特典があるのです。

青色申告の特典って?

青色申告の特典でもっとも大きい特典としては65万円控除です。
売上から経費を引いた所得(利益)から65万円さらに引けるのがこの控除です。

ただ65万円の控除を受けるには、先ほどの複式簿記という複雑な会計処理のほかにも、確定申告書と決算書をe-Taxで提出したり、作成した帳簿などを電子帳簿保存法に則って保存する必要があります。

e-Taxはその準備が手間と思われるかもしれませんが、最初の1回限りの手間です。

電子帳簿保存法もクラウド会計ソフトを導入すれば対応しているはずです(設定は必要ですが)。

ただこれが難しかったとしても複式簿記にすることで55万円の控除が受けられますし、複式簿記も難しければ10万円の控除もあります。
このように控除額が少なくなるにつれ条件も緩くなっています。

10万円控除の条件は

  • 青色申告承認申請書の承認を受けている
  • 簡易帳簿をつけている

の2つです。

10万円の控除は青色申告の特典なので、青色申告の申請が必要です。
「青色申告承認申請書」はこちらの記事もご覧いただければ。

「簡易帳簿」というのは、簡易とあるように複式簿記ではなく、「白色申告と同じ家計簿のようなものでいいですよ」というものです。会計ソフトを導入しなくても、Excelで大丈夫です。
ということで、65万円や55万円控除では必要な「貸借対照表」も、10万円控除であれば不要です。

65万円控除のハードルが高ければ55万円控除 → 10万円控除というように受けるのがおすすめです。

白色申告より青色申告10万円控除がおすすめ

白色申告も帳簿の作成は必要です。
ただ先ほどの青色申告の10万円控除の「簡易帳簿」と同じです。

青色申告にしたいけど、面倒そうだからずっと白色にしていたという方は、まずは青色申告の10万円控除の特典を受けましょう。
控除額は10万円であっても、青色申告の特典は受けられます

たとえば、家族に支払った給料を経費にできる金額。白色申告だと奥さんなどの配偶者は86万円(配偶者以外は50万円)という限度額がありますが、青色申告は適切な額であれば経費にできます。

ほかにも、事業で出てしまった損失を翌年度以降に繰り越せます。

〇まとめ
青色申告の65万円や55万円の控除はたしかにメリットはあります。
その条件にはそれなりのハードルもあります。
まずはそのハードルをきちんと知っておきましょう。

なんとなく青色申告を選んで、後々になってからハードルの高さに気付くというのは避けるべきです。
それでも青色申告にするのであれば、後々困らないように準備はしておきましょう。

いっぽうで、青色申告はハードルが高いから白色でいいというのももったいないです。
帳簿の条件が白色と同じ10万円控除を受けた方がいいです。
他の恩恵もあるので、帳簿のハードルだけで判断しないことがおすすめです。

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