地方公会計の担当となったら理解しておきたい財務書類。
まずは前提知識として、その作成までの流れを中心に見ていきます。
財務書類が作成されるまでの5ステップ
財務書類には、
①貸借対照表、②行政コスト計算書、③純資産変動計算書、④資金収支計算書
の4つがります。
複式簿記というツールを使うと、4つを同時に作成することができるわけです。
「なぜ同時に作成できるの?」については後で書きますが、
ここでは、全体的な流れを確認することにします。

例えば、車を「買った」というアクションがこれにあたります。
売った場合も同じく。
”お金の出入りにつながるアクションは「取引」っていうんだ”
くらいの理解をとりあえずはもっておきましょう。
ちなみに、歳入歳出決算では、このお金の出入り(収入と支出)だけ記録するので「現金主義」と呼ばれてますが、
統一的な基準では「発生主義」。
つまり、お金の出入りのないアクションも「取引」に含まれます。
減価償却費という費用が代表例のひとつです。
取引を記録すること=「仕訳」といいます。
仕訳の一覧が「仕訳帳」です。
(仕訳帳という名前自体はある意味どうでもいいですが・・・)
この仕訳。簿記を習ったことがあれば馴染みのあるものですが、
はじめての場合は「??」
(脱サラして会計士受験ではじめて勉強したわたしもそうでした)。
仕訳、つまり「記録する」決まり事(ルール)をある程度は覚えておく必要があります。
複式簿記とは、いわばこのルールのうちの1つです。
「総勘定元帳」は、仕訳を転記した帳簿です。
「勘定科目」という名前ごとに
・金額
・内容
を日付(4/1~3/31 出納整理期間まで)順に転記したものとイメージしておけばいいでしょう。
集計すれば作成することができるので、公会計システムのボタンクリックで自動的に作成できます
(Excelでもできなくはありませんが)。
総勘定元帳が「勘定科目」という名前ごとであったのに対し、
「合計残高試算表」は、すべての「勘定科目」を一覧にした集計表とイメージしておけばいいでしょう。
これも集計すれば作成することができるので、公会計システムのボタンクリックで自動的に作成できます
(Excelでもできなくはありませんが)。
「財務書類」は、合計残高試算表を転記したものです。
財務書類には、①貸借対照表、②行政コスト計算書、③純資産変動計算書、④資金収支計算書
の4種類がありますが、「合計残高試算表」には①~④の情報が網羅されているので、転記するだけで作ることができます。
仕訳を集計して、転記した書類が財務書類なので、
結果として、4種類の書類を同時に作ることができるというわけです。
ただ、財務書類の様式は決められているため、この様式に転記しなければなりません。
仕訳のルール①(複式簿記 vs 単式簿記)
Step.2の仕訳の理解は、地方公会計(統一的な基準)のもとでは欠かせないものです。
ここでは、取引の事例をひとつあげ、仕訳についてみていくことにします。
事例:2021年5月20日に保守点検委託料100,000円を預金口座から支払った。
なお、予算科目(節)13.委託料
官庁会計、つまり歳入歳出決算のもとでは、
・13.委託料 100,000円
と記録されます。
つまり、「保守点検の委託料に100,000円を支払った」ことがわかります。
いっぽうで、地方公会計(統一的な基準)のもとでは、
(借方)PL物件費 100,000 (貸方)CF物件費支出 100,000 (摘要)令和3年度〇〇保守点検委託料として
と記録します。
この仕訳をことばに置き換えると
①保守点検の委託料として100,000円かかった(コストが発生)
↓
②キャッシュで払った(預金が減った)
①が原因、②が結果をあらわします。
このように原因と結果の2つの側面をセットで表現することを「複式簿記」といいます。
いっぽうで官庁会計では、
「委託料100,000円」という1つの側面だけ表現するため「単式簿記」とよばれています。
仕訳のルール②(借方と貸方)
仕訳では「借方(かりかた)」と「貸方(かしかた)」という位置を示す名前があります。
借 方 | 貸 方 | ||
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 |
PL 物件費 | 100,000 | CF 物件費支出 | 100,000 |
借方は左側、貸方は右側です。
ひらがなで書くと
「かりかた」→「り」は、左にはねるので左側。
「かしかた」→「し」は、右にはねるので右側。
という覚え方がよく知られてはいますが、
面倒なので、丸暗記したほうが早いかもしれません。
仕訳のルール③(金額の符号)
金額の符号は必ず正(プラス)です。
仕訳をExcelで作成しているケースでは、まれにマイナスの値(「△100,000」とか「-100,000」)を見かけますが、
これはやってはいけません。
複式簿記では借方(左)と貸方(右)のどっちに書くかでプラスとマイナスを表現します。
仕訳のルール④(勘定科目)
「勘定科目」とは名前です。
財務書類の4つそれぞれで名前が決まっています。
歳入と歳出で予算科目(款・項・目・節)が決められているのと同じようなイメージです。
いろいろな名前があるので、つい「覚えなきゃ!」となりがちですが、仕訳に触れていく過程で自然と(嫌でも)覚えてしまうので、
覚えるという作業は必要ないでしょう。
それよりも
勘定科目名の左隣にある「PL」「CF」の意味を理解しておきたいところです。
PL:行政コスト計算書
CF:資金収支計算書
つまり、
「PL 物件費」の勘定科目は「行政コスト計算書」で使う勘定科目、
「CF 物件費支出」勘定科目は「資金収支計算書」で使う勘定科目
という訳です。
ちなみに、
「BS 事業用土地」→「貸借対照表」
「NW 税収等」→「純資産変動計算書」
です。
ここで一旦、区切ります。